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「某中国地方国立H大学ソフトボール部殺人事件」

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小池は考えている。
輪島のローション。
アレを凍らせれば鈍器になるのではないか。犯行後はレンジで溶かして容器に戻せばいい。
いや…と、思い直す。
あの容器は500ml分しかない。凍らせたとして500gの重さだ。
そんな軽さで人が殴り殺せるだろうか…

吉木は考えている。
小池のマッサージ器。
あんな軽いプラスチックの棒では、とても凶器にはならないだろうな。
いや、使いようによれば…例えば、振動させながら殴ればどうだろうか…

輪島は考えている。
吉木のコンドーム。
彼女もいないくせにあんなもの後生大事に抱えててどうするんだか。
しかし蛇の皮を入れるよりはマシだ。蛇というのは嫌な生き物だ…ツルツルとして薄気味悪い…舌をチラチラと出し入れしている…谷口は蛇みたいに狡猾な奴だった…

 


小池は水槽をジッと見つめている。
原色の熱帯魚たちの底に、黒白の石が沈んでいる。まるで碁石のようだ。
そう、俺もそろそろこの事件に白黒つけなくては…
「あ」と吉木がこちらを振り向いて声を上げる。
「この事件の犯人を1人に特定することができるぞ」