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「某中国地方国立H大学ソフトボール部殺人事件」

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別荘には人数分の個室と、風呂、トイレ、キッチンが備え付けられていた。
彼らは各自の荷物を部屋に置いたあと、リビングで夕食のカレーを食べ始めた。
「そういえば」と小池が切り出す。
「今朝車を出そうとしたら、運転席のガラスに変な紙が貼ってあったんだよ」
懐から出した紙を3人が覗き込む。
A4サイズの用紙には、
『今夜12時誰かが死ぬ』
とだけ印刷されていた。
「おいおいなんだこりゃ」
と吉木が高い声で驚く。
谷口が皆の顔を見回す。
「誰かが余興でも用意してるのか」
輪島はハンカチ越しに紙を掴み、裏表を確認しながら「指紋は残ってたのか」と聞く。
「分かるわけねえだろ」呆れる小池。
「ま、言いたくないならいいんだよ」
小池は立ち上がって部屋の方へ歩く。
谷口が顔を上げて、
「おい、どうしたんだよ」
と聞く。
小池は振り返らず片手を上げて、
「運転でくたびれたから寝るんだよ。みんな死ぬなよ」
とだけ言った。
そして後から思えばそれは谷口が小池を目撃する最後の機会となった。
それを潮に各自なんとなく自室に引き上げていき、問題の12時には別荘は夜の静寂に包まれていた。
そして朝が来て、彼らは仲間の死体を発見することになる。